ものがたり絵本は言葉の宝庫です。
言葉は想像力をはぐくむ栄養素そのものです。
想像力とは、言葉の情報と実体験を基にして、目に見えない世界を頭の中で思い描くことです。
人生経験の少ない幼い子どもは実体験が多くありません。さし絵がそれを手助けしてくれます。
耳に入ってくる言葉と目に入ってくる絵の世界が相まって、止まっている絵が動き出します。想像力がフル回転です。
想像力を働かせることで、絵本の中の登場人物の気持ちになって物語の世界に入りこみ、主人公に自身を重ねて共感することができます。
この想像力こそが読書力です。
文字が読めることと本が読めること(読書力)は違います。
例えば、アインシュタインの相対性理論はどうでしょう。
物理学の専門の方や強い興味を持つ方は別として、多くの一般の方々にとっては難解な理論書はさっぱり理解できません。文字が読めるからと言って、その本に書かれていることに共感し、深くその世界を知ることは容易ではありません。
おはなしを耳で聞き、絵をじっくりと見る(読む!)ことが大事だからこそ、絵本は大人が子どもに読んであげなくてはいけません。
私たちがお勧めする福音館書店の絵本は、文は大人が音読をする、絵は子どもが見ることを大前提にして作られています。
耳に心地よい美しい言葉であるのか、子どもが目にするものに値する芸術性の高い絵なのか、文と絵はぴったりと合っているかということを、作家と編集者が真剣に考えて、納得のいくまで時間をかけ、一冊一冊丁寧に作られている福音館書店の絵本は、60数年間に「ぐりとぐら」など多くの優れたものがたり絵本を世に送り出しています。
しつけや学習を目的とした絵本もたくさん出版されています。子どもが本当に求めているものは、“おはなし”を楽しみながら想像力を膨らませ、『あー、おもしろかった!』と満足のできる絵本に違いありません。
「ものがたり絵本のいりぐち」
2才前後になると言葉に強い関心をもつようになります。
言葉を聞く楽しさやよろこび、おもしろさを繰り返し味わうことは、言葉の獲得に欠かすことのできないとても大切な体験です。
子どもは、リズムのある響きのよい言葉が心地よく繰り返され、日常の生活体験にそったテーマの絵本をとても好みます。
「絵で語ることは文にしない」
言葉は耳で聞くだけでなく、絵から読み取る言葉もたくさんあります。
『てぶくろ』の絵本では、雪が積もってとても寒そうな冬の情景が描かれています。
「今は冬です。外は雪が降り積もっていてとても寒いです。」という文章は書かれていません。絵を見ればわかるので、その文章は削られています。
質の高いものがたり絵本は、文と絵の調和にとてもきめの細かい配慮がなされています。
子どもは描かれている絵からもたくさんの言葉を身につけていきます。
聞く言葉と感じる言葉の両方が重なり合って、子どもの言葉の感性が磨かれていきます。
「ことばあそび・詩の絵本」
言葉の響きやリズムを楽しむ「ことばあそび」や「詩」の絵本も、子どもの言葉の世界を大きく広げてくれます。
作家の感性あふれる擬態語や擬声語の絵本は、意味を超えたおもしろさを感じさせてくれます。
詩人が選び抜いた美しい日本語に触れることは、言葉の持つ力を感じることに他なりません。
「昔話絵本」
昔話は耳で聞くおはなし(・・・・)として語り継がれてきた口承文化です。
言葉から物語の世界をイメージするもので、本来は絵本ではありません。
昔話が語る世界にふさわしい良質の挿絵がついていて、大変評価の高い昔話絵本もあれば、内容が変えられているものや、陳腐な挿絵がつけられて、長く語り継がれてきた昔話の本質を損なうようなものもたくさん出版されています。
同じタイトルで様々な出版社から発行している絵本の中から、本当に子どもに伝えるべきものはどれなのかを、吟味して選ぶことは簡単ではありません。
ぜひ私たちこどものともにご相談ください。
「ナンセンス絵本」
『意味はないけれどもものすごくおもしろい、ユーモアがあって子どもが本当に喜んで笑っちゃう』と、ナンセンス絵本の巨匠 長新太さんはおっしゃっています。
“ナンセンス”を辞書で引くと、『意味のないこと。ばかげたこと。つまらないこと。くだらないこと。……』とあります。
理解しようとした瞬間にわけがわからなくなるので、大人にとってはなかなか受け入れ難いものです。
子どもは違います。想像力の自由度が高い(頭が柔らかい)子どもは、無条件に受け入れます。
子どもと一緒に楽しんで、常識や固定概念で凝り固まった頭をほぐしてみてはいかがでしょうか?