『知ることは感じることの半分も重要ではない…』
アメリカの生物学者 レイチェル・カーソンは著書「センス・オブ・ワンダー」(上遠恵子 訳 新潮社刊)の中で言っています。
“知りたい!”と思う原動力は興味、関心を持つことです。“興味、関心”のきっかけになるのは“驚き”です。
幼い子どもにとってのかがく絵本の役割は心を動かすことです。
“かがくの芽”を伸ばす最良の栄養は“感動”です。
「知っているつもり…?!わかっているつもり…?!」
みなさんアリ(蟻)はご存知ですか?知らない人はいないと思います。
では、アリの足は何本? 身体はいくつに分かれている? 足は身体のどこから出ている? 足に毛ははえている? 触角の形は? 目に瞳はある? ………
次々と突っ込んだ質問をされると案外わからないものです。
身近にいるアリなのに知らないことばかりです。
視覚的に(画像として)記憶していることを知っている、わかっていると思いこんでいるだけだと思います。
子どもに同じように尋ねると、「知ってるよ!」と答えます。多くの子どもはアリの足が6本だと知っていますが、身体のどこから足が出ているかとなるとあいまいです。
さらに質問を続けると、どんどん知りたいという気持ち(知的好奇心)が沸いてきます。
知的好奇心がピークに達すると、子どもは外に飛び出してアリを見てみたくなります。
アリを捕まえても、動き回るし小さいので上手く見ることができない。
そこで考えます。
指でそーっとつまむ。虫眼鏡を使う。子ども自身がさまざまな工夫をします。かまれて痛い思いをしたり、つぶしてしまって指先が臭く(蟻酸のため)なったり、五感全部でアリを感じます。
その過程を経て得られた真実(知識)は表面的なものでは決してありません。
科学の基本である「予測・仮説→観察・実験→検証・考察→結論・知識の獲得」は、子ども自らの知的好奇心が基になって初めて成立します。
そして大切なことは、子どもの周りにいる大人がその知的好奇心を共有することです。
子どもと一緒に驚いたり不思議がったり、真実の発見の喜びを分かちあえる大人がたった一人でもいてくれれば、子どもの“かがくの目”は研ぎ澄まされ、“かがくの芽”はどんどん伸びていきます。